三単現のSの罠(笑)

大手塾に勤めていた頃、私は、自分の学年の主任をしながら、灘や東大寺を受験する最難関クラスの英語も担当していたので、世間からは「勉強ができる子を教えるのが得意な先生」と思われていることが少なくない。

そのせいかどうか、ウチの塾も、「勉強ができる子しか通えない塾」と思われていたりする。(実は全然そんなことはない。)

しかし、私はけっこう「勉強ができない子」を教えるのが得意だし、何より好きである。

できない子をできるようにしていくのは教師冥利につきる。



先日から、中1に、「一般動詞三単現のS」を教えている。

勉強ができる子はスイスイといくところだが、できない子はつまづきやすいところだ。

ここでつまづくと後が大変なことになるのでしっかり身につけさせておきたい。



He plays tennis.  →  He doesn't play tennis.



とするだけなのだが、これが英語を習いたての中学生1年生にはそうやさしいものでもない。

「わかる」と「できる」はちがうし、この三単現のSというやつは「わかったつもり」にもなりやすいところである。

doesn't をつけて、一般動詞を原形に戻すことを念入りに伝える。

いくつかの文を板書し、書かせてみて、口頭で言わせてみる。

分かった気になっている生徒に念入りにもう一歩、二歩押していく。

そうやっているうちに、生徒達はだんだんできるようになっていくが、まだである。

あいまいに、あるいは単純化して理解し、表面的にできているだけの子を、教師はあぶりだしてあげなければいけない。

さらに一歩、念入りに押すのである。

ここができるかできないかが、「できる先生」と「できない先生」の違いだ。

問題演習へ入る前の最後の1問、私は次のセンテンスを板書し、「これを否定文に直しなさい」と言った。




Mary washes the dishes every day.




我ながらナイスな問いである。

先生の説明を適当に聞いていた子や、あやふやにしか理解していない子をあぶり出す一文であり、「もーわかってるよー、しつこいなあ」と言いながら、実はわかっていなかったという子に、ガーンと一発食らわす一文である。

こういう一文がスパッと「引出し」の中から出てくるのであるから、私ができない子を教えるのが好きだというのが嘘ではないということはお分かりいただけると思う。


 

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