花に囲まれた日

9日の成人の日のこと。

昔の教え子が会いに来てくれた。

私が最初に3年間通して教えた代の子で、卒業以来会っていないので、18年ぶりだ。

私の塾講師歴の中でも一番叱った子だった。

今でも私はけっこう「怖い先生」だと思われているだろうが、今、SORAで一番叱られている子の50倍は叱っていたと思う。

「その子」なんて言ってるがもう34歳になる男性である。

塾生時代、その子は成績もそう良くはなく、奈良や畝傍や郡山なんて全然届くような子ではなかった。

勉強嫌いで、宿題もろくすっぽやらず、いつも私に叱られていた。

学校の定期試験も400点なんてめったに取っていなかったと思う。

言っても言ってもやらない。

普通これくらい叱られたら、ちょっとはやるものだが、本当にやらない。

とにかく叱っていた記憶しかないくらいである。

最後の方はその子と私の根比べみたいになっていた。

そんな叱られ通しだったその子がわざわざ会いに来てくれた。

私は「誰にでも好かれていた良い先生」ではなかったと思うし、好かれようと思って仕事をしてきたわけでもない。

この仕事を20年以上続けているが、中には私に厳しくされて、私のことを嫌っていた子もきっといただろうと思う。

特に私自身が若かった頃はそうだろう。

一番私のことを嫌っていていいはずの子が18年も経って会いに来てくれたのである。





実は、昔この子の大学が決まったとき、お母様が塾へ訪ねてくださり、「これも先生のおかげです」と丁寧に仰ってくださったことがあった。

「kamiesu先生の言ってたことの意味が分かった」と本人が言って、高校で勉強に目覚めたのだそうだ。

私としては叱りっぱなしの3年間だったので、恐縮することしきりだった。

進むことになった大学の名を聞いて驚いた。

彼が一浪した後合格したのは防衛医大だった。






「生徒から学ぶ」というようなことを言うと、世間一般には、謙虚で良い先生のように聞こえるが、私はこの台詞が好きではない。

「プロがそんな台詞を簡単に吐くんじゃねえよ」という思いがある。

そんなふうに普段思っている私であるが、このことは強烈なインパクトがあったし、この子からは本当に教えられたと思っている。

彼らの「スイッチ」はいつ入るか分からない。

「花」はいつ咲くかわからない。

同じ種の花でも、同じ野に生えていても、咲く時期は微妙に違う。

花は必ず咲く。

また、何色の花が咲くかも分からない。

それを深く信じて生徒達の前に立つことができるようになった。




彼は「抹茶バームクーヘン」を手土産に、奥さんと一緒に来てくれた。

その子、この子とずっと書いてきたが、34歳の彼は当然ながら立派な大人で凛々しい顔をしていた。

ちゃんとあの頃の面影もある。

「20年近くになるね」と私が言うと、「18年です」と即答してくれた。

眼科医になったこと、自衛隊は基本的に健康な人しかいないので、一般の病院で技術を磨かないといけないということ(そりゃそうだ。自衛隊には白内障とか、逆まつ毛になる人はいない。目に入った何かの破片除去の手術はあろうだろうけれど。)、いろんなことを教えてくれた。

「あれから」の説明に夢中で、途中まで奥さんの紹介をしてくれなかったくらい、私も彼の話に集中していたし、彼も熱を込めて話してくれた。

「君の話をね、いろんな場面で生徒達に話すことがあるよ」と言おうかなと思ったけれど、照れくさくて結局言わずじまいになった。

1月8日に塾のチラシを入れて、それをお母様が帰省していた彼に見せて、「行こう」となったらしい。

同行くださった奥様曰く、建物の前で何度か行こうか行くまいかとウロウロしたそうである。

「あの頃」を思い出してためらったらしい(笑)




夜、家へ帰って、mixiやらFacebookやらでつながっている教え子達のページをウロウロした。

母になった子、懸命に仕事に打ち込んでいる子、「道の途中」にいて頑張っている子、学生生活を謳歌している子、そしてその日、成人式を迎えた子達。

色んな種類の色んな色の花に囲まれているような気持ちになれた。










コメント

忙しい毎日にちょっと振り回され気味でしたが
素敵なエントリに清々しい気持ちになりました。

生徒達には「卒業したら塾のことなんか忘れる方が健全」
なんて自虐気味に話したりしますが、関わった生徒達は
みな自分の中に生きています。そのことを大切に思える
塾講師でいたいと思います。

  • gen177
  • 2012/01/12 11:59

gen先生
私も昔は「卒業したら塾のことなんかスッパリ忘れてしまいなさい」と言っていました。あることがあって言わないことにしましたが、基本的にはそういう考え方であるべきだと思っています。

  • kamiesu
  • 2012/01/12 12:39

お話の「彼」とは○○君かそれとも●●君か…と想像しながら懐かしんでいます。私も18年前の教え子が家を建てるようになって仕事で再会したのが二度ありました。私たちも齢をとっているハズですね…。

植田さん
I増君と同じ中学で同じ高校へ上がったK本君です。分かりますか?分かったのなら相当びっくりでしょ?

教え子が家を建てる!もうそんな時代ですか(笑)時の流れ速すぎ(笑)

  • kamiesu
  • 2012/01/13 14:42