大切な場所

畝傍高校の近く、交差点を越えたところに「ファミリーマート」がある。今から10年程前のこと。その年の入試、自分の受け持った生徒の中でたった一人だけ畝傍高校を合格させることができなかった子がいた。周りの子は皆合格だったのにその子一人が不合格。その子は泣きじゃくっていた。私にもう少し力があれば、その子を合格させられたかも…そう思うと、その子に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、私もボロボロ涙が出てきた。もちろん言葉でいくら慰めてどうにもなるものではないが、それでも何とか「それから先」をしっかりとした歩みで進んでもらいたくて何とか言葉を紡いだ。大の大人が泣きながら話をした場所、それが「ファミリーマート」の前だったのである。(なぜ校内ではなく、その場所だったかはちょっと記憶がとんでいて覚えていない。)教え子の不合格に涙したことはそのときだけではないが、そのときのその子の表情、周りの光景、空気の温度やら何やらが強く記憶に残っていて、自分にとっては「特別」になっている。大の大人が涙を流したその場所は、時を経て「生徒達の学力を絶対に伸ばす」という思いを新たにし、自分の心の中に湧く「怠惰」を吹き飛ばしてくれる「大切な場所」となった。車でその前を通る度に「感情」が湧き上がってくる。教え子を合格させた「喜び」や不合格にさせてしまった「痛み」。これらはこの仕事をしていく上での気持ちのあり方の「原点」であるように思う。「原点」は何より大切にしたい。進学塾SORAを畝傍高校の近くに作ったのはそんな理由も少しある。今年も明日から「発表」が始まる。
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