書くことを厭わぬ子に

小学生を見ていると、中学生よりも個々の生徒の「書く力」に大きな差があるように思う。以前にも書いたが、英語の導入期で、発音の力の差は学力の高い子と低い子でそんなに差異は生まれないのだが、「書くこと」に関しては、学力の差が大きく出てしまう。

学力の低い子は、アルファベットの練習からすでにたどたどしい。bとdの書き間違いやスペルミス、答え合わせの不正確さなどは、圧倒的に学力の低い子に圧倒的に多い。「書く力」は学力に直結しているのである。

とすれば、学力を伸ばすためには、「書く訓練」を徹底的に施さなければならないのは明白だ。学力の低い子は「書く」のが嫌いだ。なんとか理由をつけて書かないですませられないかと考えている。だから、無理やりにでも書く量を増やし、書くのを厭わない鍛えをいれておかなければならない。指導者からの強制力は不可欠だ。

小5、小6というのは、そういう「鍛え」を入れておく最後のチャンスかもしれない。「書く力」の弱い子は、中学に入ったらだんだん授業がわからなくなり、点数が取りにくくなる。(字を書くことに時間がかかる上、書くことに意識が向きすぎて聞くことに集中しにくい。)そうなる前に「鍛え」を入れておかなければならない。

昨日の小5の英語の授業、私はスペルのテストを行ったのであるが、一人の子だけ満点で、後の子は練習が全然足りなかった。今の子はノートにびっしり綴りを練習することがなかなか発想できない。1行か2行書いて「覚えられません」なんて言ってしまうのである。

(ここで言っておきたいのが、私はこの子たちに、ノートにそれぞれの単語の練習を三行ずつ書いてくるという宿題の出し方をしていないということである。課題は何のためにあるかということを分からせるために、最初は勉強の仕方を彼らにまかせてみた。回りくどいようであるが、じっくりやっているのである。)

だから授業を一時間使って、みっちりノートに単語を書かせることにした。「家でやってきなさい」では駄目だ。書くところを見てやらないといけない。最初の段階で、いきなり宿題に出してしまうと、「もう覚えたから書かなくていいと思いました」なんていう子が出てくるし、家で広告の裏に書きましたなんていう子もでてくる。テストしてももちろんできない。問い詰めると黙ってうつむいてしまう。しかしながら、それを嘆いていても仕方がない。小学生はそんなものだからである。

授業中に書かせてみると、案の定、書くのを厭う子が出る。すぐにお手本を隠して、たどたどしく書いてみて、「よし書けた」なんて言っている。それはもう覚えちゃったよと私にアピールをしているのである。じっくり書き続けることに耐えられないのだろう。

私が「覚えたかどうかは後でいいからとにかく書きなさい」と言っても、3回くらいそんなことをやっている。これをいきなり宿題にしてみても、家でまともにやるわけがない。これは「教室」で突破口を作り、粘り強く指導していかなければならない部分である。

ここまで私は小学生の英語の授業を本当にゆっくり進めてきた。こぼれていく子を出さないためである。もう一つの理由はしっかりと地ならしをして一気に飛躍させるためである。

カリキュラムを優先させると地力がつけられない。カリキュラム優先の塾では落ちこぼれが出やすい。小学生に英語を教えるのに、カリキュラム優先はちょっとナンセンスだと私は思う。

ここからも書く訓練をふんだんに入れていく。そして全員を「書くことを厭わぬ子」に仕立て上げて、中学生になってもらおうと思っている。

(旧ブログより転載。加筆修正。)

コメント

ご無沙汰いたしております。
毎日、必ず読んでおります。


この記事を読んで「あぁ、高校生・浪人生も同じだな」と思いました。
「書くこと」「読むこと」を「繰り返す」… それを厭う生徒が、近年、急増しているように思います。

「『もう覚えたから書かなくていいと思いました』」
「『家で広告の裏に書きました』」

「テストしてももちろんできない」
「問い詰めると黙ってうつむいてしまう」

全て「成績が今ひとつ」の「高校生」「浪人生」にあてはまります。
「それを嘆いていても仕方がない」「【高校生】【浪人生】はそんなものだから」と考えねばならないのでしょう。

彼らに対しては「小学生のように接すること」で突破口を見出してゆこうと思います。
まさに「急がば回れ」ですね…。

貴重な示唆を賜りました。
ありがとうございました。

  • DrNERO
  • 2009/12/27 11:00

DrNERO先生

そういう生徒たちは、勉強が「点数」と引換の「等価交換」であるべきだと思っているのでしょう。できるかぎり「勉強時間」を値切って価値ある「点数」を手に入れたいと思っている感じです。そのような考えは「安物買いの銭失い」であると分かるまで教え続けるのが私たちの仕事ですね。お互い頑張りましょう。

  • kamiesu
  • 2009/12/28 10:57