2009.07.31 Friday
2009.07.30 Thursday
人は習慣の奴隷
生徒達が問題を解いている様子を観察していると、様々な情報が入ってくる。「生徒を観ること」は生徒を伸ばすための第一歩だと私は思っている。
とりあえず何か書き出す子、やたらと書いては消しを繰り返す子、逆に書き出すまでに時間をかける子、出した答えを眺め、確認している子、そんなことしない子、あっさりと「解けない」と判断してしまう子等、同じ問題に取り組んでいても、その反応やアプローチは様々である。
解答を見、マルかバツかを見るだけよりも、解いている様子を見ることによって、より密度の高いその子の情報が入ってくる。当然、「情報」の質が高い方が指導の質も高くなりやすいのは言うまでもない。
私が問題を解くときに絶対やってはいけないと思っていることの一つに、「自分が問題を解いたときに、隣の子の解答をチラ見して確かめる」というのがある。長年この仕事をやってきて、この癖のある子が本当に点数が上がらないの嫌というほど見てきた。
ご同業の方々ならば、思い浮かぶ子が必ず何人かはいるはずだと思う。授業中、問題を解かされたとき、解けたら、自分で確認をしないで、隣の子の解答を、横目でちらりと毎問確認するのである。このような子は教師が指示を出しても、隣の子に何をするのかを確認してしまったり、指定されたページや問題番号を隣の子を見て確認したりすることが少なくない。
この夏、夏期講習会で、SORAの授業に参加している子の中にもそういう子はいて、そういうことをしないように注意をするが、言われた本人は少し戸惑っている様子が見える。無意識にやっているので本人にはあまり自覚がないからだろう。
このような習性と言おうか、癖が染みついている子が、「試験」において、問題文を読み、問題を解き、確認し、これでよしと決断しなければならないのである。点数が取れるはずもないのは言うまでもない。(こういう子はじっくり考えることができないので、解答欄を埋めるために、問題文を読みもせず、とんでもない答えを書きこんでいたりする。)
「人は習慣の奴隷」という言葉を聞いたことがある。けだし名言。その人がもっている「習慣」こそが、その人の人となりであり、「習慣(行動パターン)」こそがその人の人生を作っている。
小さな振舞いの中に、その子の「習慣」が見え、そこから、その子の「習性」が推測できる。もしそれがその子の「伸びない原因」になっているのであれば、そこをしっかりと修正してやらねばならない。いつも言うが、勉強時間が長いだけで、あるいは先生が分かりやすく教えるだけでは学力はなかなか伸びない。
私は、授業技術についてうるさく言うが、実は、授業技術は生徒を伸ばす「第一の柱」とは思っていない。子どもを伸ばすために、「授業」よりも大切なことは山ほどある。その中でも「悪い習慣の修正」は、生徒が自分で気づいてできることではないが故、「プロ」の出番なのである。だから私は生徒を観察するのだ。
2009.07.27 Monday
ヒーローに会えた日(4)
『Graceland』をポールと一緒に作った偉大なベースプレーヤーが、私のために行動してくれている。こんな光栄かつ嬉しいことはない。私は胸がいっぱいで、「それだけでもう十分です」という気持ちだった。
それでも彼はあきらめない。彼は誰かを探している様子だった。つまり許可をとれる人物を探していたのだろう。元々が無茶な話だったのだが、この日の私は何かに祝福されていた。なんとそこへアートガーファンクルの息子のジェームズ・ガーファンクルが通りかかった!どうやらこのツアーではスタッフとして動いているようだった。
バキチはチャンスを見逃さない(笑)いきなりとっつかまえて私を紹介してくれた。ジェームズはびっくりするくらいお父さんの若い頃に似ていた。
(ネットから拾いました。お父さんの若い頃にもうそっくり!!)
ジェームズはバキチから事情を話されると、私を真剣な顔で見つめ、「分かった。ちょっと待ってて」
と言って、急いでどこかへ行こうとし、そしてくるっと振り返って「やっぱり一緒に来て」と言った。「Stay here.」と言ったときの声がもうお父さんの若い頃の声にそっくりなのに驚きながらついていく。
そして再び、ここで待っててと言われ、待っていると、ジェームズはお父さんを連れてきた。アートガーファンクルが私の方に歩いてくる。キャップをかぶり、眼鏡をかけ、ラフないでたちで、そしてとても優しい顔で微笑みながらゆっくりと歩いてきた。
高校生のときから憧れていた人が目の前にいる。目に薄く涙が滲む。アートはにっこり笑って、握手の手を差し出してくれた。握手をしながら、私は「30年近くあなたの大ファンでした。(I've been a great fan of you for almost thirty years, since I was fifteen.)」と言った。言いながら、生徒達の教科書に似たような文章があったなとちらりと思った。
(つづく)
2009.07.25 Saturday
楽に勉強を始めるコツ
勉強ができるようになるためには「心」を変えなければならない。
ただ単に勉強時間を増やしただけでは成績はめったなことでは上がらない。
勉強ができるようになるには、物事を肯定的に捉える習慣をつけ、勉強に対して否定的な見方をするのをやめなければならない。
「勉強嫌だなあ」と思いながら、勉強に取り組んでしまうと、「自分自身を伸ばす」という発想はできなくなる。
「勉強をやらなくては」と力みすぎるのもよくない。
心の反対側で「勉強はやりたくない」という思いを練ってしまっているからだ。
目標を立て、決めたことを淡々とやるのがいい。
寒い寒いと思いながら、冬の滝に入ってしまうと、寒さに鋭敏になりすぎてしまい、とてもではないが耐えられない。
覚悟を決め、無心になって滝に入るのである。
「寒い」とも思ってはいけないし、「寒くない」と思うのもよくない。
勉強も同じだと思う。
「嫌だ」とか「めんどくさい」なんていう気持ちに意識を向けてしまうと、それらの感情は一気に大きくなってしまう。
だからそれらの感情をできる限り意識しないようにするのが上手いやり方だ。
「前向きになれ」というが、無理やりポジティブになろうとすると、自分の心の芯にある自身のネガティブさを認めていることになるので、逆に「反作用」で「ネガティブ」を大きく育ててしまうことが多い。
「前向き」になるよりも先に「後ろ向き」であることをやめる、あるいはそこに気を留めないようにする。
「あ、時間だ。やろ。」
朝起きたら、伸びをするように、歯を磨くように、さも当たり前の行動を当たり前のようにやろうとする。
それこそが「行動」を起こしやすくし、新しい自分を構築する最大のコツだと私自身は思っている。
考えるのはたったひとつ。
「私は勉強ができるようになるのだ!」
これだけであるべきなのだ。
2009.07.24 Friday
ヒーローに会えた日(3)
ベースのバキチ・クマロはアパルトヘイト下の南アフリカ共和国で自動車整備の仕事をしていた。家でベースの練習をしていると、警察に捕まってしまうので、窓を閉め、音を小さく小さく絞って練習に励んでいた。
80年代半ば、アメリカから超VIPのミュージシャンが来て、腕の立つミュージシャンを集めろと言っているからこいと、知り合いからバキチのところに電話がかかってきたが、彼は仕事の最中だからと断ったものの、電話の向こうで、とにかくベースを持ってこいとうるさく言うので渋々行ったのだという。
アメリカからの超VIPミュージシャンとはポールサイモン。たまたまあった南アフリカの音楽のテープを何気なく聴いていたときに何かがひらめき、アパルトヘイト下の南アフリカに行くことの批判も恐れずにやってきた。
バキチはそのポールサイモンのところへ、ベースギターをケースにも入れず、裸のままそれを抱えてやってきた。そして言われるがままにベースを弾き、ポールサイモンにぜひ一緒に仕事をしてくれと言われたのだという。ポールと握手したときバキチの手はグリスまみれで、ポールは驚き、「ここはアフリカなんだね。」とにっこり笑って言った。
ポールが南アフリカを中心に4つの大陸で集めてきた音を基に完成させたアルバム「グレイスランド」はグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞するが、このアルバムを聴いた世界中の音楽にうるさい連中が、アルバムの完成度に驚くだけでなく、「このベースは誰が弾いているのだ?」とベースが(彼らにとって)斬新であったことも話題になった。
アルバム「グレイスランド」がリリースされたとき、私は大学4年で、ポールのこの新作が待ち切れず、日本版が出る前に京都の十字屋で輸入盤を手に入れ、いち早く聴いた。
「グレイスランド」に初めて針を落としたとき、一体何が起こったか理解できなかった。一曲目のBoys In The Bubbleはアコーディオンの印象的なフレーズで始まり、そこへ大音量のドラムのバスが割って入る。今まで聴いてきた音楽ではないし、何拍子の曲なのかもわからなかった。ポールサイモンに何があったのだと困惑した。凄い音楽とのファーストコンタクトとはそういうものなのだろうと今にして思う。
その「グレイスランド」のサウンドの要であったバキチ・クマロが目の前にいる。フレンドリーに笑ってくれる。夢のような時間だった。
コンサート後、楽屋でバキチに素晴らしい演奏でしたと伝えると、彼はとても喜んでくれ、お互いにハイになっていたせいか、ハグまでした。
GR Digital バキチ・クマロと私の握手。 撮らせてほしいと頼んだ。
バキチにささやかなプレゼントを渡した後、彼のフレンドリーさと人のよさに甘えて、お願いをしてしまった。
「ポールとアートにプレゼントを持ってきたんだけど、もしよかったら、二人に渡しておいてくれませんか。」
するとバキチは真顔になって、「そんなのは自分で渡した方がいいんだ。ついてこい」と言って、部屋を出た。
(つづく)