Nikon D700 Sigma50mm/f1.4
上の写真は合宿のひとコマ。
SORAの合宿は基本、自学の合宿である。
合宿中は「授業」がほとんどない。
自らが学ぶべきことを自ら学び、わからないことがあるときは「先生、教えてください」と教えを乞いにいくスタイルになっている。
SORAの合宿は「詰め込まない」合宿である。
合宿中に出された課題はたった一つ。
「合宿中5回は最低質問に行くこと」
自分の課題を見つけ、問題を解き、調べ、わからないことを先生に質問するだけの合宿である。
詰め込まないがゆえに生徒達は能動的にならざるを得ない。
その彼らの質問に応えるため、SORAの合宿は先生が山ほど参加する。
多い日で14人先生がいた。(少ないときでも9人)
八木校、桜井校で生徒は50名程しかいないにもかかわらず、これだけの先生を用意する。
生徒に質問に来なさいと言っても、先生の数が足りないと生徒の質問を処理しきれない。
「合宿中5回は質問に来なさい」というたった一言のためにかかるコストや手間は膨大なものになる。
しかし私達はそれを毎年やっている。
「明日の朝イチでこのプリントに書かれた単語のテストを行います」
「明日までにこの課題プリントをやっておきなさい」
こう言えば、生徒の質問は激減する。
質問の数もコントロールできた上、生徒も勉強させられる。
普通はこうやって生徒の質問が殺到しないようにコントロールするものである。
しかし私達はそんなことは一切しなかった。
(そういうことは普段の授業でいくらでもできることである。)
先生を山ほど用意して、すべて二泊三日で対応した。
「質問」はすべて記録していて、誰がどの教科で何を質問したのかは全部残してある。
質問リストに記載されたのべの質問数は二泊三日で270ほど。
一回の質問で一問ということは少なく、最低2〜3の質問をするので、270×2〜3の質問を私達は二泊三日で対応したということになる。
質問を捌いた私達も凄いが、それだけ質問に来た生徒達も凄い。
(鍛えられていない生徒達にいきなりこの環境を与えてもうまくいかないのは言うまでもない。)
合宿二日目には高校生の卒塾生にも「先生」になってもらった。(4名参加してもらった。)
毎年思うが、彼らはなかなか上手に教える。
彼らはプロではないから、教え方がぎこちないときもあるが、彼らには、つい半年前まで受験勉強をし、受験をしてきたという経験がある。
これは大きい。
つい半年前に受験をくぐってきた年齢の近い先輩に教えてもらうという経験は生徒達にとって得難いものだったろう。
Nikon D700 Sigma50mm/f1.4
東大寺学園に通うM君の周りには男子連中が集まっていた。
彼らはこのM君の周りにいて、長い間そこで勉強をしていた。
M君を独り占めするのではなく、質問が終わっても、M君から離れず、彼の横で勉強しているのである。
同じ中学の先輩だったということもあるが、東大寺学園に進んだ実力者の先輩に触れてみたかったのだろう。
Nikon D700 Sigma50mm/f1.4
保護者向けのブログでも書いたが、私はこの3枚の写真に学びの本質を見る。
彼らは先輩に憧れ、敬意を払って教えを乞い、質問が終わったら自分の席で勉強すればよいものをこんなところでずっと勉強していた。
(一人が「先輩、座布団をどうぞ」と言っていたのが可笑しかった。)
「成長したいと願い、力ある人に憧れ、時間を共有し、その人から学びたいと願う」これこそ学びの本質ではないか。
「競争」を指導の核にしたり、生徒に過度なノルマを押しつけて勉強させたりするような指導ではなかなかこういうものは生まれない。
質問をしていると時間を取られ、課題が終わらないし、テストで点数が取れない。
そういう追い立てられたような環境ではじっくりと学ぶことができないのである。
(ノルマをびっちりと課し、「隙間」の無い状態にしておいて「じっくり取り組むことも必要だぞ」なんて言う塾の先生も少なくない。じっくり取り組ませたいなら、じっくり取り組ませる環境をきちんと作るべきなのである。)
上の3枚の写真を見ると、生徒達がリラックスし、肩の力を抜けているのが分かっていただけると思う。
彼らは遊びに夢中になっているような様子で勉強をしている。
「競争」や、過度の「ノルマ」を排すると、こういう感じになってくる。
そういえば、合宿中は叱ることもほとんどなかったし、「勉強しなさい」と言うこともなかった。(勉強しにきているのだからわざわざ勉強しなさいと説教することもない。)
指導者がよけいなことをしなければ、生徒はきちんと成長できる。
「よけいなことをしない」というのは、実は一番コストも手間もかかってしまう。
「よけいなことをしない」ためには高い技術も必要だ。
(「よけいなことをしない」のは「何もしない」のと全然違うのだ。)
それでも私達は彼らの大きな成長のために努力していきたい。