2013.10.28 Monday
『戦いはスポーツだが勝つことは思想だ』
自分の番号を見て、本当に涙が出てきた。ボロボロ泣いた。合格してたら、よっしゃーと叫ぶつもりだったのに全然できなかった。声の出るような状態じゃなかった。この喜びの大きさは、一年半の苦しさと引き換えだ。kamiesu先生は「人は苦しみの中からしか学べない」と言ったが、それは本当だと思う。苦しかったからこそ学びは大きいし、手にしたものに対して心から嬉しいと思えるのやと思う。
部活を途中で辞めるという決心をしたときはしんどかった。自分はどう考えても部活と勉強の両立はでけへんし、部活をやっとったら、きっと第一志望の大学に合格できないだろうということは薄々気づいてた。でも、実際に辞めるという決断はなかなかできへんくて、一緒に頑張ってきた友達に「部活辞める」と伝えるときが一番つらかった。友達に「なんで?」と聞かれて、「大学受験頑張りたいから」と答えたとき、「俺達かって受験するっちゅうねん!」と言われた。半分はその通りと思ったけど、「俺はお前らみたいに頭よくないねん!」と叫びたかった。
第一志望の大学に合格するために部活やめたんやから。絶対に受からなあかん。そう思って必死にやった。落ちたり、志望を下げたりして、友達に負けたら、あいつらは部活の思い出と、受験の成功の両方を手に入れることになる。俺には両方無い。そんなんは絶対に避けたい。だから必死でやった。
遊びを全部削るのはよくないと思ってたから、人の半分にすることにした。みんなが10遊ぶなら、自分は5にしよう、そう思ってた。つきあいの悪いヤツみたいに思われるのは嫌やったから、文化祭の打ち上げとかにも出た。そういうのはめっちゃ気を使ったし、一人で遊んだり、ぼーっとしてる時間をできるだけ削るようにした。
何度もめげそうになりながら勉強してたが、kamiesu先生がイチローの話をしていて、それで興味を持って、『イチローの名言』を色々調べた。それはメチャメチャ自分の力になった。kamiesu先生もたまには良いこと言うが、イチローの言葉のキレにはかなわない。ただ先生がイチローの言葉を紹介してくれたのでそれには感謝してる。
『準備というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく、そのために考え得るすべてのことをこなしていく。』
という言葉はそのとおりやと思った。だから自分が言い訳できそうなできそうなものを自分の周りから全部排除した。携帯を持たないってわけにはいかなかったけど、LINEは削除してTwitterは勉強のことしか呟かないと決心した。
『「たのしんでやれ」とよく言われますが、ぼくにはその意味がわかりません。』
『少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事。』
『プレッシャーはかかる。どうしたってかかる。逃げられない。なら、いっそのこと(プレッシャーを)かけようと。』
イチローの言葉はしんどいときの助けになった。イチローのこれらの言葉がなかったら、俺は合格できなかったと思う。
部活もやって、遊んでもいる連中に、いくら勉強しても最初の8ヶ月ほどは正直負けてた。同じ部だったAに模試の成績聞かれるのは本当に辛かった。毎回必ず聞いてくるのは本当に根性悪いなコイツと思った。
でも、この8ヶ月経ったときの模試で成績がメチャメチャ伸びた。初めていつも模試の結果聞いてきたAが顔色変わってた。「ま〜そら、部活まで辞めて勉強してたもんな〜。俺も部活終わったら頑張るわ〜」と笑いながら言いやがった。でも初めて見返すことができた。(A,顔ひきつっとった(笑))
成績が上がるまではホンマにしんどかった。部屋で暴れてオカンにメチャ心配されたし、妹にも迷惑かけた。でもこの試験で結果出たときは「ホンマに結果って出るんや〜」と思って、そこからはさらに頑張ることができた。上がると信じることができたらしんどいのはたいしたことない。
みんなが受験勉強を真面目にやり出した頃、さらに勉強時間増やして頑張った。そうしないと人と差をつけることはできない。そこから順調にグングン伸びたわけじゃないけど、辛抱してやってたら伸びるって分かってたので、辛くはなかった。ただヘボいやり方だと伸びないので、先生のアドバイスや受験体験談などは読み込むようにしていた。
『何かを達成した後は気持ちが抜けてしまうことが多いので、打った塁上では「次の打席が大事だ」と思っていました』
模試でいい成績が取れたときはイチローのこの言葉を思い出して、気を引き締めた。まあAにはAが部活引退してからも一回も負けへんかったけど。絶対に負けたくないと思って頑張れたというのもあるから、Aには、イチローの次くらいには感謝しないといけないかもしれへん(笑)
受験勉強の最後の頃は、周りから浮くとかそんなこと、気にしてられへんかったけど、そういうヤツは、俺だけでなく、クラスにもチョコチョコいたので、気にならなかったというのが正直なところ。でも、逆にそういうヤツがどれだけ頑張ってんねんやろということの方が気になって、「自分、文法、何で勉強してるん?」とか「一日何時間くらいしてるん?」とかさりげなく聞いたりしていた。(全然さりげなくではなかったと思うけど。)
『夢は近づくと目標に変わる。』
受験間際、大きなミスがない限り、半分は無理と思っていた大学に合格できる可能性が高くなってきたときにイチローのこの言葉は本当だと思った。ここで気を緩めたりして落ちたら馬鹿馬鹿しい。最後の最後まで気を緩めないのは本当に難しかった。伸びないのは辛くなくても、最後まで緊張感を保つのは本当にしんどかった。部活を辞めたときのことと、Aの顔と、夏に見学に行った大学の様子を思い出しながら頑張った。人生でこんなに頑張ったのは初めてだった。
たしかに大学に合格できたのはうれしかったけれど、受験勉強の間に学んだことも俺の財産。先生が「孤独を愛せ」と言ったことの意味は今ならわかる。「なかよしこよしは駄目だ」の意味も。言われた最初は全然わからんかったけど(笑)まあその分成長したということなんやと思う。
kamiesu先生が、受験のときに思ったことを綴っておけ、そしてどこかにそれをしまっとけというから、この受験で感じたことを書いてみた。自分では絶対にやらないけど(笑)紙に書いたら、絶対失くすので、スマホに書いてしまっておくことにした。10年経ったら読み返してみろと先生は言うので、とりあえず言われたとおりにしてみる。10年後これを書いたことを覚えているかどうかはわからんけど、ここに書いたことは自分の力にはなっていることを信じてはいる。
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上の文章は私が書いた。創作ではあるが、かつての教え子達の言葉や行動から紡いだ文章だ。こういう子は君達が気づかないだけで君達の周りに(多くはないだろうが)実際にいる。
ある詩人は「戦いはスポーツだが、勝つことは思想だ」と言った。私はこの子の様にしなさいというつもりはない。部活も頑張ればいいし、やりたいこともやればいい。けれど、君達が学力を伸ばして、大学受験に合格したいというなら、この子以上に勉強のことを考え、この子に負けない努力を、どこかでどうにかしてやらないと勝てませんよ、と言いたいのだ。